ライオン宇野さんに聞く、新規事業の作り方(2019/5/7・経営組織論)

こんにちは。
ちいたべです。

今年度僕が受講している科目の一つに、モリタヤスノブ先生の経営組織論があります。
そんな経営組織論の令和初の講義は、唐突に講演会になりました。

ゲストスピーカーは、ライオンのイノベーションラボという新規事業部で所長を務めておられる宇野大介さんです。

宇野さんがどのようにイノベーションを起こそうとしているか、ビジョンや実例も含めて語ってくださいました。

そもそもイノベーションラボとは?

www.lion.co.jp

イノベーションラボは、ライオン株式会社にある新規事業部で「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー*1」になるために必要なビジネスを立ち上げるための部署です。

2018年に発足した新しい部署で、もともとは研究開発をしていたメンバーが多くいるとのこと。
揃いの青い制服を着た集合写真がカッコいい。

イノベーションを起こすために、社内のハブとなって企画を作り続けています。
また、ビジョンとしては社内だけでなく企業をもつないで、生活者(顧客)に価値を提供するというビジョンも掲げています。

イノラボには、従来の事業部や開発部と大きく異なる点が主に3つあります。

「おどろき」がゴール

イノラボのゴールは、「おどろきのある新規事業」を立ち上げること。
通常の開発は、既存の枠組み(歯磨き粉とか洗剤)の中で「製品」や「容器」などを研究・改良していくイメージ。

しかしイノラボでは、単に新しいモノを作ることではなく「新規事業=ビジネス」を作ることを目的にしています。

個人的には、「おどろき」をゴールとしている点も興味深いと感じました。
少し話は逸れますが、僕が就職活動で選考に進んでいる会社で、説明会の際に社長さんが「情報あふれる現代社会で振り向いてもらうには、驚きを提供しないとダメ」と語っていました。
その会社も業界の中で逆説的な新規事業を作った会社で、イノベーションに「おどろき」が深く関わっていることをよく理解できました。

これは、おどろきによって笑顔をつくる、というもう一つのビジョンにもつながっています。

スタートは「困りごと解決」

事業を立ち上げるプロセスとして、アイデア出発点を「みんなの困りごと解決」に置いていることも、特徴です。
ライオンはこれまでの企業活動で大量の顧客や製品のデータを持っています。それらを分析してみんなの困りごと(需要)を掘り起こし、それを解決するためのアイデアを出して、開発・テスト・リリースと進んでいきます。

組織のかたち

イノラボでは「ネットワーク型組織」という組織構造を取っています。
何かのプロジェクトを進める時、手を挙げた発案者がリーダーとなって、共感してくれるメンバーを集めてチームを結成するというものです。
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ヒエラルキー型組織とネットワーク型組織とか全能感(まだいってんのか)とか - WeBLoG

地位や経歴に関係なく、言い出しっぺが中心になってやるのが良いなと思いました。メンバーを集めてプレゼンして「一緒にやりましょう」ってしないとチームができないのも。身内にもウケない企画は難しいでしょうし。
また、複数のプロジェクトが同時並行で進むので、あるチームのリーダーが別のチームでメンバーをしていることがよくある、というのも素敵です。

新たな文化作り

世の中を驚かせる新規事業を作るには、そのアイデアが出せる環境作りをする必要があります。
宇野さんは、これまでの枠からはみ出して多様な事業開発をしても良いのだとメンバーが認識するには時間がかかったとおっしゃっていました。

従来の枠にとらわれていると、「こんなことやってもいいんですか?」や「これはうちですることじゃなさそう」などと、せっかくのアイデアが萎縮してしまいます。

そこで宇野さんは、

  • 既存事業には一切かかわらない
  • メンバーは起業家を目指す
  • 自分のことを所長と呼ばせない

という3つの文化を作りました。

既存事業はNG

新しく事業企画部を作ると、他の部署から「これをIoT使ってやってみてよ」などと声がかかることも多いようです。
しかし、そういった話は新規事業を作る上で負担となり、業務が圧迫されてしまいます。

新しいビジネスを作るために、既存の事業とは関わらない姿勢を打ち出しているのです。

起業家を目指す

新規事業を立ち上げる部署である以上、メンバーにはただの社員ではなく起業家の精神が必要です。
もしどこかのチームが社を離れて独立開業するとしても、それも成功の形だというお話が印象的でした。

社員が独立するのは会社にとってはリスクだと思うのですが、それを抱えてでもイノベーションを起こすという気概を見ました。

役職で呼ぶな!

イデアを立場に関係なく気軽に出すために、宇野さんは自分のことを「所長」と呼ぶことを禁止したとのこと。
確かに、役職名で呼ぶよりもさん付けのほうが距離感が近くなりますよね。

ネットワーク型組織である以上、どんな立場の人にも自分の考えやアイデアをぶつけないとそもそもチームが作れないことを考えると、呼び方という細かいと思える点でもコミュニケーションやアイデアの障壁をなくしているのだと理解できました。

イノベーションの実例

ヘルスケアのためのイノベーションとしていくつかの例が取り上げられました。

口臭ケアアプリ

たとえば、舌をスマホで撮影して自分の口臭リスク度を測る口臭ケアアプリがありました。
これは、既存データの掘り起こしから「自分の口臭に気づきたい」「相手に相手自身の口臭に気づいて欲しい」というニーズがあることが判明。
口臭の原因は舌の汚れにあることが長年の研究で分かっているので、舌の状態を画像認識で診断し、リスクを判定するという仕組みになっています。

既存データの掘り起こしが成功し、研究結果や最新の技術とマッチした事例です。

NOSSY

https://weekly.ascii.jp/elem/000/000/420/420673/

こちらは、子供の迷子を防止するIoT機器。
ライオンの事業範囲であるヘルスケアと直接の関係がなさそうですが、こちらもイノラボが関わった新規事業。
子供の靴に取り付けて、親の近くにいるときだけ歩くたびに振動が伝わるというものです。

なんと、親子アイデアソンで出てきた「迷子になった妹から羽が生えてきて見つけられるようになる」というアイデアがもとになっています。

多くの迷子防止キットは、紐をつけるなど身体的拘束があったり、迷子になった時に事後的に見つけられたりという製品が多いそうです。
しかしこれは、子供が自発的に親から離れなくなるというもの。

突拍子もなく思える子供発信のアイデアを大切にして、「迷子」×「楽しさ」×IoTという軸はそのままに、実現可能な製品になっているところがすごいと思いました。

実際にアイデアを出すワークをしてみたよ

イノラボの事例としてもう一つ、伸縮性のある素材で円周を測ることができる技術を応用した腹囲計測パンツがありました。
そのパンツを履いておくと毎日のお腹周りのサイズを勝手に測ってくれるというもの。

ここで森田先生から、この伸縮性のある素材を使ったアイデアを実際に出してみようとのワークが出されました。
森田先生の思いついた例としては、競走馬の体に取り付けてその日の体調をデータ化するというものでした。

学生から出たアイデア

  • 毎日の食事をスマホで撮影して画像認識で栄養素やカロリーなどを計算し、その計測パンツの腹囲データと連動させて健康アドバイスを送るアプリ
  • 田んぼに設置して、ひもの伸縮具合で水かさを測るIoT機器

などがありました。伸縮性のある素材というテーマで考えているとなかなかアイデアが出ず、とても難しかったです。

「なんで宇野さんは所長になれたんですか?」

最後に質疑応答の時間があり、質問をすることができました。

イノラボでおこなっている組織づくりや文化づくりの、宇野さんの中でのバックボーンはどんなところにあるのかをお聞きしました。

もともと宇野さんは開発に携わっていたのですが、その頃から仲間と自主的に新製品の研究をするなど、新しい物事に関わることが好きだったとのこと。

イノラボができた時、上司や周りに「あそこに行きたいアピール」をそこはかとなく出し続けて、本当に所長を任せてもらえたそうです。
「やりたいアピール」はやはりめちゃくちゃ大事なんだと思いました。
僕も会社に入ったらキャリアのできるだけ早い段階で企画の仕事をできるよう、やりたいアピールをしていこうと思いました。

もちろんアピールだけではなく、宇野さんはこれまで社内の新しいプロジェクトやポジションにずっと挑戦して、そこに適応してきたという実績がありました。誰もやったことがないことに挑んで実績を作り、周りから信頼されることを積み重ねていくことが、やりたいアピールを成功させることに重要だと理解しました。

新しいポジションに適応するアドバイスとしては、なんでもまず言語化することをおすすめされました。
イノラボであれば、ゴールは何で、アイデアのスタート地点は何で、どんな役割を果たすなどの部分にあたります。
そのポジションに関わる根本的な部分を最初に詰めておくことで、役割に適応したり組織をうまく回したりすることができるということです。

まとめ

実際に大企業で新規事業開発に携わっておられる方が、どんな仕事をされているのか知る機会になりとても勉強になりました。

特に、やりたいことのために自分からアピールをした宇野さんのエピソードには、見習うべきだと強く思いました。

また、イノラボの評価基準として「難しい挑戦をしたこと(≠成功したこと)」があるという話も出て、革新的なことのためには失敗を恐れないこと・失敗を許容して学びにつなげる文化が必要であることも分かりました。

それから、イノラボが全社のハブとなってイノベーションをおこなうこと、ネットワーク型組織でプロジェクトを立ち上げるにはチームメンバーを集める必要があること、宇野さんが実績を積んで所長になったことからは、周囲の人の信頼を得ることが仕事で非常に大切だと感じました。多くの場合、なにか新しいことをするには他の人の協力が必要ですし、他部署や他社をつなぐためにはその人たちに信頼されていなければなりません。
なにかに挑みやりぬくことで、次の挑戦への機会が与えられることをより実感しました。


今回の講演会は当日になって決まったようで(?)、宇野さんはついさっきまで福大卒の社長が集まる勉強会のようなところで講演をされていたようです。そんな方のお話が聞けるのはとても幸運な機会だったと思います。森田先生の講義取っててよかった。
お時間を取ってお話してくださった宇野さんありがとうございました!

*1:主導的地位にある企業