あるむふぁっきら

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福岡の大学生による雑記帳。

神父と頭蓋骨: 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展 【読書感想文】

恐竜・古生物

神父と頭蓋骨

図書館で見つけたので読んでみた。

神父と頭蓋骨: 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展」というタイトルの、北京原人の発見に貢献した人物テイヤール・ド・シャルダンの生涯を描いたノンフィクション作品だ。



手に取った理由

彼はバチカンがまだ進化論を科学として受け入れていなかった1900年代前半に活躍した古生物学者である。彼はイエズス会に所属していながら、当時は異端ともされていた進化論を提唱していたため教会から様々な圧力をかけられることになった。本の出版を妨害され、地位を奪われ、ヨーロッパから中国の辺境へと追放された。結果的に彼が中国へ追放されたことで人類の進化の証拠の一つである北京原人が発掘され、バチカンは面食らったに違いない。

彼が神父としての立場と科学者としての立場、聖書への信仰と科学としての進化論との間でどのような葛藤があったのか、どうやって自分の中で二つをすり合わせていったのか興味がわき、この本を読んでみることにした。

感想

テイヤールは始めから科学として進化を受け入れており、聖書は文字通りではなく寓話的に読むべきであると理解していたようだ。だから創造説と進化論の間で揺れることはなかった。

ただ、彼のキリスト教の信仰と進化論を融合させた「オメガ点」の概念はとても興味深いと思った。
彼によると世界には

  • 物理的な力
  • 思考の力

の二つがあり、この二つの力が収束する先が「オメガ点」である。人類は進化の流れの中で思考する力を得ていき、最後にはキリストとひとつになることができるのだという。

アメリカ大統領候補になっている共和党クルーズ氏のように、欧米にはいまだに進化論を全く否定し聖書の文字通りの記述に凝り固まっている人々がいる。そのような人々にとって、このキリスト教と科学の融合という考え方は一石を投じるものになるのではないかと思う。

北京原人の行方

北京原人は第二次世界大戦のさなか、戦火を免れようと中国からアメリカに輸送される途中で行方不明になってしまった。様々な説がささやかれているが、戦後70年以上たった今でも人類学において貴重なこの化石は失われたままである。

日本軍が秘密裏に接収し、そのまま現在も日本のどこかの博物館か大学の研究室で眠っているのではないかという人もいる。実際、旧日本軍はインドネシアへ進軍した際にはジャワ原人の化石を1体接収し、日本へ持ち帰っている。(後に返還)
本書の中では日本軍がそのように原人の化石に興味を持っていた理由として、「愛国心を奪うため」だったのではないかと推測されている。「現生人類になる前からこの土地にヒトの祖先が住んでいた」という事実を表す原人の化石は、ある意味でその国のアイデンティティにもなりうるからだ。

いずれにせよ、戦争によって生物学上きわめて貴重なこの化石が失われてしまったというのは非常に残念なことであり、争いは何も生み出さないということを如実に物語っている。

まとめ

自分が想定していた内容とは少し違っていたが、宗教と科学の関係について考える上でとても有用な本だ。
テイヤールの人柄にも惹かれるものがあり、それぞれ個性的な周囲の人間とのエピソードも面白い。特に芸術家の女性ルシール・スワンとのプラトニックな関係は興味深く感じられた。

図書館にはまだまだたくさんこういった面白い本があるはずなので、これからも様々な本を読んでいきたいと思う。